自分の将来を思い描きながら、自分にあった進路選択を
松﨑 孝介さん 令和3年度電気電子工学科卒業
高専時代で培った知識・経験は、他分野の研究であっても活きている
高専時代に幅広い分野を学べた経験が、現在にも活きています。私は電気電子工学科に所属し、電磁気学や電気回路、プログラミングだけでなく、物理にも興味を持って学びました。大学にて情報系に転向しましたが、電気電子工学科で培った基礎知識が他分野の研究を理解する上で役立っています。
また、低学年から実験レポートを書いていた経験や、5年次の卒業研究も今に活きています。レポートを書く力は、大学に編入してからの実験レポート作成や研究論文の執筆に、大いに役立っています。さらに、実験原理を理解する際にも、高専で習った知識が役立ちました。大学のある友人は授業でその原理を習わなかったと言っていたので、私にとっては大きなアドバンテージだったと思います。
私(東北大学)の場合、高専時代の成績が大学編入後の単位変換に使われました。その成績は、大学での研究室配属の際にも参考にされたため、高専で良い成績を取っておいて良かったと思っています。
課外での活動が将来の目標を考える原点に
囲碁・将棋部での活動に力を入れていました。2年次と3年次にはタイの学生と交流し、将棋を体験してもらう活動を行いました。ルールの説明書を英語で作成して紹介したことは、私にとって初めての英語実用の経験で、相手に理解してもらえたときにとても嬉しかったことを今でも覚えています。また、2年次から将棋の全国高専大会に出場し、5年次には長野高専として団体戦で優勝しました。大会の緊張感や喜びを共有した仲間とは今でも連絡を取り合っており、私にとって大切な存在となっています。
3年次の終わりには、2019年10月の台風19号で学習が困難になった中学3年生を支援するボランティアに参加しました。4年次からは校内学習塾でティーチング・アシスタント(TA)として活動し、1年生が物理を理解できるようサポートしました。これらの経験を通して、困っている人に手を差し伸べることの大切さや、理解してもらえたときの喜びを感じ、私の将来の目標を考える原点となっています。
5年次に全国高等専門学校将棋大会の団体戦で優勝した
自分の将来を思い描きながら、大学院進学を決意
3年の夏に、高専や大学の教員を目指していることを先生方に相談し、博士号の取得が必要であることがわかりました。3年の冬には、編入学とその先の大学院進学を目指す決意をしました。その後、多くの先生に進路について相談して悩んだ末に、4年の冬に東北大学の受験を決意しました。大学を選ぶ際には、進学後に入りたい研究室を調べるだけでなく、いくつかの大学を実際に見学して、居住や通学の環境を確認しました。受験についての詳細はこちらのページをご覧ください。
>>編入体験談 2022年 東北大学工学部電気情報物理工学科|ZENPEN
大学に入って、さまざまなバックグラウンドを持つ友人が増えました。他の高専出身の友人もできたほか、単位振り替えができなかった大学2年次の授業も履修した関係で、学年を超えた関わりも作れました。研究室に所属してからは出身国や出身学部が異なる多くの方々と関わっています。また、学会に参加することで、さらに多様な背景を持つ方々と関わることができており、とても刺激を受けています。
日本語の持つ複雑な語形変化に挑む
私は現在、東北大学情報科学研究科の修士1年生です。学部3年の冬から、人間が使う言語をコンピュータに理解させることを目指す「自然言語処理」分野の研究室に所属しています。私の研究では、主に日本語学習者の支援を目的として、日本語の動詞の活用とその意味をまとめたデータセットを作成しました。そして、そのデータセットを基に、日本語学習者向けの意味理解・語形変換ツールを開発し、こちらのページで公開しています。
この研究の新規性は、動詞の語形変化を意味から捉えられる点にあります。従来の研究では、語形から意味を捉える手法が多いのですが、日本語の語形変化が理解しにくい学習者にとっては、従来の日本語文法体系を用いた学習が難しい場合があります。たとえば、「未然形」や「連用形」などの文法用語は、時制や否定などの意味理解にはあまり役立ちません。一方で、「食べる」+過去+否定=「食べなかった」というように、学習者が伝えたい意味をもとに語形を変換できると、より直感的に日本語を学ぶことができます。このように、意味から語形変化を捉えるアプローチを提供することが、本研究の新しい点です。
本研究の成果は、学部4年の3月に神戸で行われた国内学会と、修士1年の6月にメキシコで行われた国際学会のワークショップで発表しました。
メキシコで行われた国際学会にて
学部卒業時に東北大学総長賞を受賞した
自分の将来を思い描きながら、自分にあった進路選択を
まずは中学生の皆さんへ。長野高専では、
そして在校中の皆さんへ。大学への編入学試験は情報が少なく、大学ごとに問題や日程が異なります。模試もあまり整備されていないため、自分の実力を判断するのが難しく、不安に感じる時期があるかもしれません。しかし、自分の将来を決める大事な時期だからこそ、色々な人に相談して、大いに悩んで良かったと思っています。ぜひとも、実力で大学を決めるのではなく、「その大学が良い」といえるポジティブな理由を持って、後悔のない進路選択をしてください。応援しています!
(2024年9月13日掲載)