私の基礎を作った高専生活
北條 智彦さん 平成10年度機械工学科卒業
高専を選んだ理由を教えてください
父親は工業高校出身で、私が小さいころから農業機械が壊れたら自分自身で直していました。そのような姿を見て、憧れて機械工学を学びたいと思うようになり、中学3年の進学先を選択する際、父親と同じように工業高校か、長野高専に進学すると決めていました。長野高専への進学の決め手は自宅から近かったことと卒業後に大学に編入学が可能だったことでした。
高専生活を振り返って,印象に残っていることはありますか?
在学中はエコノパワー同好会(現エコノパワー部)に所属し、低燃費自動車を製作していました。さらに、3、4年生のときは高専ロボコンに出場、長野オリンピックの年の工嶺祭の出し物ではクロスカントリースキーの荻原健司選手像(骨組みだけでしたが…)を製作しました。平日は授業終了後から夜遅くまで,夏休みは朝から夜遅くまで,実習工場で低燃費自動車,ロボット製作等に没頭し,高専生活でいちばん長く過ごした場所が実習工場でした。何もないところから低燃費自動車やロボットを設計し,適切な部品加工、組み立てをしてものづくりをする経験は,授業で学んだことと同様に現在の私の研究活動の基礎になっています。
今の仕事・生活でのエピソードを教えてください
東北大学の理念の一つである「研究第一」のもと、研究活動に邁進しています。私は次世代の自動車用鋼板の開発に関する研究を行っています。近年、自動車の軽量化と交通事故時の乗員の安全確保のため、自動車用鋼板の高強度化が重要となっています。今後、電気自動車や燃料電池自動車の普及に伴って交通事故時のバッテリーや水素燃料タンクの保護の観点から自動車用鋼板の高強度化はさらに重要な課題となります。
最近の研究では、優れた特性を発現する鋼の微細組織形成挙動や変形挙動を明らかにするため、世界屈指の大強度陽子加速器施設J-PARCや大型放射光施設SPring-8を利用して今まで捉えることができなかった熱処理中の鋼中の炭素の拡散現象や鋼板内部の応力、塑性ひずみ分布、引張変形中の結晶構造変化を測定することに挑戦しています。
後輩や高専を志望する中学生に伝えたいことはありますか?
高専では工学とは関係なくても興味のあることに挑戦することに制限はありません。その挑戦を周りの仲間や先生方が全力でサポートしてくださいます。私が所属したエコノパワー同好会もはじめは数名での活動でしたが,多くの先生方や同級生、下級生に支えていただいて現在のような長野高専を代表する部活動へと発展しました。在校生の皆さんやこれから長野高専に入学する小中学生の皆さんには、貴重な高専の学生時代に興味のあること,やってみたいことに積極的に挑戦してもらいたいと思います。その後の人生に役立つはずです。
(2022年2月掲載)