工学に触れて学問に興味を
松尾 幸二郎さん 平成16年度環境都市工学科卒業
高専を選んだ理由を教えてください
中学2年生のときに両親が自宅を新築した際に、担当してくれた設計士の方の仕事がかっこいいと思い、建物を作るということに興味をもったのがきっかけでした。もともと思いついたら後先考えずすぐにやりたいと思う性格で、当時は大学までのことは全然考えず、県内で建物に関することが学べる高校の1つとして長野高専が視野に入りました。今思い返すと、高専が他の高校と違う、ということも後押ししたように思います。
高専生活を振り返って,印象に残っていることはありますか?
やっぱり当時のクラスメイトとの様々な活動ですね。今でもやっていると思いますが、クラス対抗の球技大会が強く印象に残っています。私は主にソフトボールに出ていましたが、強敵の先輩クラスや教職員チームとの試合は燃えました。4C時代に(轟先生がおられた)5Cの先輩相手に1点差で勝っているときに、私がセカンドを守っていて、ショートの久保田豊君、ファーストの小林政行君とゲッツーをとったときの興奮した気持ちは忘れません。また、勉学では到底かなわない先生方と対等に戦え、ときには先生の無邪気な顔を見れて親近感が湧く、という意味でも良い機会でした。
その他にも、土日に朝からみんなで製図室にこもって製図課題を実施しつつ、くるまやラーメンにお昼を食べに行ったり、工嶺祭での様々な活動など、クラスの結束を強めるたくさんの出来事がありました。
今の仕事・生活でのエピソードを教えてください
今の専門分野は交通工学です。私の考える交通工学は、人の交通行動や交通現象を科学的に捉え、よりよい交通システムのあり方を追求する学問です。一見すると人それぞれに見える交通行動や交通現象ですが、集団でみると一定の法則性が見えてきます。例えば、人が移動するとき、目的地までの距離が増加するにつれて、移動手段として徒歩を選択する割合は綺麗な指数曲線を描いて減少していきます。もちろん人の行動を対象としているので、より詳細に見ていくとあいまい性が生じます。そこで活躍するのが数学の一分野である確率論と統計学です。あいまいさも含めた交通行動や交通現象を確率論的モデルで表現し、その詳細な挙動を決めるパラメータを、統計学を用いてデータに基づき推定しようとする、そんな学問の姿勢に惹かれました。交通というとても身近な現象を研究する中で、数学の授業で抽象的に習って当時はよく分からなかった確率論や統計学の価値やありがたさを感じる日々を過ごしています。
参考ページ
後輩や高専を志望する中学生に伝えたいことはありますか?
高専は、勉強に対する目的意識を「問題を解く」ものから「問題を理解して解決しようとする」ものへと変えてくれるとても良い環境であると思います。例えば、私は、数学で三角関数を習ったとき、なんでこんなただの三角形の性質を学ぶのか、と思っていました。しかし、設計のための基礎知識である構造力学や、地図をつくるための測量学を学ぶと、三角関数の価値がとても良く理解できました。だって三角関数があるからこそ、様々な方向から建物にかかる力の足し算・引き算ができたり、測量誤差の補正ができるのですから!!
(2021年3月掲載)