「変人」が、高専を変える
下平 啓太さん 令和元年度電子情報工学科卒業
高専を選んだ理由
小学生の頃からパソコンをいじることが好きで、そこからゲームなどをつくるプログラマーという仕事に興味を持ったのが始まりでした。中学生になり進路に迷っていたところ、教室にあった「県内の高校一覧」という冊子の一番後ろにあった長野高専のページを見つけて高専の存在を知りました。そして最終的には、パソコンについて学べること、就職か進学かを5年間かけて決められること、そして好きなことをとことん追求できそうだと思ったことが決め手となり、高専を目指すことにしました。
部活、つくってみませんか?
高専に入学した私は、先輩の誘いに流されるようにしてロボコンプロジェクトに入ります。ここではアイデアを形にしていく「モノづくり」の面白さ、そして「無いものはつくればいい」という考えを学ぶことができました。今でもそれが自分の中での考え方に活きています。
そして1年生の冬ごろに、中学時代に有志として参加したことのある「合唱」を高専でもやりたいと思い、ロボコンに誘ってくれた先輩と共に「合唱同好会(現在は合唱部)」を創立することにしました。多くの壁を乗り越えて合唱同好会を創立できたとき、高専って本当に「やりたいことができる」場所なんだ、と感じたのを今でも覚えています。
もし「高専には入りたい部活がない!」と感じている後輩や中学生がいたら、ぜひ声を上げてみてください。同じような思いを持つ人がどこかに必ずいます。
変えられるものは変える
私は3年生の冬ごろ、学生会に入って部長会長を務めました。部長会は高専の課外活動を束ねる組織で、主な活動としてはクラスマッチの運営があります。
しかし本校の学生は、クラスマッチの日になると朝の点呼だけ受けて遊びに行ってしまいます。そうした現状を変えていこうと、競技種目に「eスポーツ」の導入を提案しました。なかなか首を縦に振ってくれない先生方とギリギリまで交渉を重ね、最終的には熱意で押し切る形となって導入を認めていただきました。学生総会で「eスポーツ」の発表をした際のどよめきやTwitterの反響は今でも忘れられません。
入念な準備の成果もあって当日は多くの学生に会場へと足を運んでもらうことができ、会場は異様なほどの盛り上がりを見せました。またその様子が新聞に掲載されるなど、校外でも大きな反響を呼びました。運動が苦手な学生でも輝ける舞台をつくり上げられたことが、今でもとても良い思い出となっています。
広がれ、高専生の輪
高専は特殊な学校なので、全国に60校弱(2021年1月現在)しかありません。長野県内の高校は100校余なので、それよりも少ない数です。しかし高専大会や高専文化発表会(文発)などに参加すれば、全国の高専生と交流を深められます。Twitterなどを活用したり、高専カンファレンスというイベントに参加したりすれば、もっと多くの人と交流することができます。
私は3年生のときに、久しぶりの長野開催となった高専カンファレンスの運営に携わりました。その数か月後、全国でも数少ない「高専生」のうち、さらに少ない「合唱に携わっている高専生」をターゲットとした「高専合唱カンファレンス」を開催し、他高専の事情や悩みを話し合ったり、全員で同じ曲を合唱したりしました。とても楽しいイベントとなっただけでなく、社会人となった今でも連絡を取り合うような友人とも出会うことができました。
高専カンファレンスは全国各地で高専生が自発的に開催するイベントです。興味のあるものや近隣で開催されるものなどあれば、ぜひ参加してみてください。そして、自分でも開催してみましょう!
就職・現在の仕事
私はNHKに就職し、松山拠点放送局(愛媛県)に配属となりました。現在は番組送出やニュース送出をはじめ、スポーツ中継でのCG送出、放送設備の保守・点検・整備、新技術開発などの業務に携わっています。
就職したら高専で学んだことは使わないんだろうな~と卒業するまでは思っていましたが、実際はそうではありませんでした。苦手だった電気回路の知識が必要だったり、放送機器の動作を理解するためにプログラミングの知識が必要だったり…。他にも卒業研究で取り組んだ経験から、視覚障害者の方々にとって便利なテレビを開発する業務にも取り組んでいます。
こんなにも高専で学んだことが必要になるなら、もっと在学中に勉強しておけばよかったと後悔しています。就職後に学び直すのは、時間もなく本当に大変です。
後輩に伝えたいこと
5年間という高専生活は、長いようであっという間です。そして高専にいると忘れがちですが、高専生活は人生でたった一度きりの青春です。そんな青春を謳歌するためにも、課外活動や学生会をはじめ、高専カンファレンスなどたくさんの活動やイベントに参加してみましょう。多くの活動に参加すればするほどたくさんの先輩や後輩とかかわることができ、幅広い人脈をゲットすることができます。
また、何かやりたいことがあれば、ためらわずに今やってみましょう。高専は色んな意味で自由な学校です。新しいことをはじめるチャンスがいくらでもあります。「こんなことがしたい」とか「こういうことをやればいいのに」という思いを持っている人は積極的に声を上げて、自分からどんどんやってみましょう。変わり者ではなく、世の中を変える者という意味の「変人」となって、今よりももっと楽しい高専生活を自分の手でつくってみませんか。